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年頭所感

会長挨拶

                  日本石灰協会会長 上田和男


            2024年(令和6年)年頭所感


 2024年の年頭に当たり、謹んで新年のご挨拶を申し上げます。
 昨年5月、新型コロナウィルスが感染症法上5類に移行し、久しぶりの「平時の年末年始」となるはずでしたが、元日に石川県能登地方を震源とする地震が、翌2日には羽田空港で航空機衝突事故が発生と、大変な滑り出しの年となりました。
 阪神淡路大震災を上回る激しい揺れ、津波、停電、断水、倒壊した家屋、大規模火災、土砂崩れ、寸断された道路、支援物資を届ける事が出来ない孤立した多くの集落、未だその全容は不明で余震がある中、懸命な救助活動が続けられています。
 避難生活の長期化が避けられず、二次避難も進まない中、低体温症、エコノミークラス症候群、持病の悪化、体調不良などによる「災害関連死」が心配です。
 亡くなられた方のご冥福を祈ると共に寒さ厳しい中で避難生活をする多くの方に一日も早い日常が戻ります事を心から願っております。
災害はいつ来るか分かりません。BCPに不備・漏れはないか?よりレベルの高い危機管理が求められています。
さて、昨年は長引くウクライナ戦争に加え、中東、東アジアの地政学的リスクの拡大を契機として、安全保障の観点から、冷戦終結以降、生産効率を追求し構築された地球規模のサプライチェーンが見直され、エネルギーや食糧、重要資源、先端半導体技術などの囲い込みが強化されました。又、米国・欧州の長引くインフレ対策の金融引き締めによる影響、更には深刻化する中国不動産不況等が、コロナ後の世界経済回復の足かせとなりました。
 こうした状況下、国内では円安による物価上昇が消費意欲に水を差し、設備投資の抑制につながるリスクが高まったものの、年央以降、半導体や部品供給不足が徐々に改善し、僅かですが明るい兆しが見えてきました。
 又、入国制限の緩和措置によるインバウンド需要も徐々に持ち直し、人の動きが活発化、個人消費の回復が見られました。
 一方、スポーツではワールド・ベースボール・クラシックで大谷翔平を筆頭に侍ジャパンが躍動、3大会ぶりに優勝しました。文化では藤井聡太氏が将棋界史上初の全タイトル8冠達成、明るい話題に事欠かない良い年でもありました。
国連のグテレス事務総長が「地球沸騰化」と表現をしました。
 2015年のパリ協定は産業革命前から気温上昇を1.5℃に抑える目標ですが、昨年の1月~10月で既に1.4℃ほどの上昇を記録、このままでは、あと7年で1.5℃に到達してしまうとの報告がありました。
 全世界で熱波、山火事、大洪水、大型台風等による被害が劇的に増えています。
 その為、国連は2035年に2019年比6割のCO2削減が必要と主張しました。
さて、石灰業界の主得意先である鉄鋼の国内粗鋼生産量は2年連続9千万t割れ、今年も同程度の生産量に止まると予想され、鉄鋼各社の経営は量より質へと大きく舵が切られています。
カーボンニュートラルへの道も待ったなしです。
 脱炭素に向けて、革新的技術開発を支援する政府の基金が倍増されました。
 排ガス中のCO2分離・回収・活用、再生可能エネルギーの電力購入、輸送用車両の代替エネルギーの導入、海外への技術提供による排出権の獲得など、課題は山積しています。
 実現には相当の時間を要しますが、鉄鋼業界は移行期として、「マスバランス式」CO2フリー製品「グリーン・スティール」が現実解として動き出しました。
 世界共通のルール作りが始められましたが、上手くゆくかはまだ、予断を許さない状況です。
 脱炭素経営を展開しようとする先進的企業にとって、情報開示は持続可能な企業としてのアピール材料です。自社はもとより、我々サプライヤーにもCO2排出量の情報を求めてきます。
さて、今年はどんな年になるのか?
 大きなリスク要因として、ウクライナ情勢や中東情勢の緊迫化に伴う資源・燃料価格の高騰、中国経済の停滞、米国大統領選挙での政治的経済的混乱、又、国内では金融政策の動向があげられています。
 昨年は賃上げが実施されましたが、上げ幅はエネルギーや食品価格によるコストプッシュ型物価上昇に追い付いていないと指摘されています。
 株価はバブル崩壊後の高値を更新、長年のデフレ脱却の兆しが見えつつあります。
日銀は金融政策の正常化、マイナス金利解除の条件として、物価インフレ目標2%と共に中小企業を含めた賃上げと物価の好循環の実現としています。
 海外企業との人材獲得競争をしている大企業からは、昨年を上回る賃上げ水準を目指すと言う声が、新年の会合で多く聞かれました。
大企業と比較すると労働分配率が高く、賃上げ余力が小さい我々中小企業は、人材の流失防止の為の「防衛的賃上げ」さえも苦しんでいますが、慢性的人手不足の解消、そして優秀な人材獲得には、継続的な賃上げが必要であり、加えて生産性向上や脱炭素化の為の技術開発と巨額な設備投資も不可欠です。
 政府は、今回の「取引価格の適正化交渉」において、長きにわたり置き去りにされてきた「労務費上昇を含めた」価格転嫁の取り組みを後押ししています。
 長く続いたデフレの日本を終わらせる為にも、お客様に「日本のモノづくりにとって持続可能な価格体系」を説明し、理解を得る努力をしなければなりません。
 運送業界も、労務費の価格転嫁が遅れ、人手不足が深刻です。
 4月、トラックドライバーの時間外労働時間規制が始まります。
 大型化、発着両端での荷物の積込、荷下ろしの荷役時間、手待ち時間の削減など、全ての時間のコントロール改善・削減は、荷主側に加え、お客様の理解と協力無くして実現は不可能です。業界として、連携を取りながら、丁寧な説明をしてゆきましょう。
 
 新型コロナウィルス感染症の影響で、3年間にわたり、多くの事業・行事が制限されてきましたが、1月16日の「新年賀詞交換会」は2020年の7月に私が会長に就任して以来、初めて開催する事が出来ました。
 コロナによる制限「失われた3年」を取り戻すべく、充実した活動をしてゆきたいと考えております。
 会員の皆様の引き続きの変わらぬご支援とご協力を賜りますようお願い申し上げます。
 最後に、日本石灰協会、日本石灰工業組合の会員各社様の益々のご隆盛と会員の皆様のご健勝とご多幸をお祈りしまして、一言、ご挨拶させて頂きました。


日本石灰協会
〒105-0001
東京都港区虎ノ門1-1-21
新虎ノ門実業会館9F
TEL.03-3504-1601
FAX.03-3593-1604
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