石灰による土質安定処理(石灰安定処理)

石灰はいつ頃から土質安定処理に使われているのですか?
Ans:
石灰による土質安定処理は人類の歴史と共に今日に至っています。
中国では、秦の始皇帝の時代に万里の長城の築造に際して、黄土を石灰で安定処理したことが知られています。
古代インドにおいても粘土を石灰モルタルで固めてダムを建設し、古代ローマでは、道路の路盤に石灰安定処理が行われていたと言われています。
日本における石灰安定処理はいわゆる“たたき土”として或いは二和土、三和土と呼ばれて土間の床などに使われていました。
[ たたき土とは、玄武岩や火山灰等風化した土に、石灰と砂と砂利などを混合して固練りとし、木片等でたたき締める方法です。]
このように石灰安定処理は、土の安定性と耐久性を維持または増大する目的で、もとのままの状態では使用出来なかった土に、石灰を添加して、使用可能な材料に変える工法で、道路、鉄道、空港、港湾、建物の基礎工事、河川改修、宅地造成等広範囲に及んでいます。
今日、大きな社会問題の一つである建設事業からの発生土や廃棄物などの処理・リサイクルについても、天然の無機物である石灰が活躍しています。

どんな石灰が使われていますか?
Ans:
生石灰、消石灰、湿潤消石灰、石灰系安定材(石灰系固化材ともいいます)があります。
なお、湿潤消石灰とは消石灰に水を添加して特殊加工したものでウエット状のものです。
石灰系安定材とは生石灰と消石灰を母材にして添加物を配合したものです。また、石灰系安定材は石灰協会の会員会社で独自に商品開発を行っています。

石灰安定処理の特徴は?
Ans:
主な特徴は次の通りです。(日本石灰協会発行、「石灰による地盤改良の手引き」より)
・含水比や塑性指数(PI)を低下させ、施工性が早期に改善できます。
・低強度から高強度まで所要の改良強度を発現させることが容易です。
・長期におよぶ強度の発現が可能です。
・有機質土、ヘドロなどに対する強度発現が可能です。
・改良土を粉砕した場合の再固化や長期に仮置きした場合の強度確保が可能です。

石灰の取り扱い方法について具体的に教えて?
Ans:
生石灰、消石灰、湿潤消石灰、石灰系安定材ともに次に示す注意事項を遵守して取り扱って下さい。
(日本石灰協会発行、「石灰による地盤改良の手引き」などより)

(1)生石灰と消防法

生石灰は水を加えると発熱することから、従前は消防法の乙種危険物第3類に指定されていましたが、昭和63年「消防法の一部を改正する法律」(法律第55号)の公布によって、生石灰は除外されました。
ただし、生石灰(酸化カルシウム80%以上を含有するものをいう。)500キログラム以上の取り扱いまたは貯蔵については、最寄りの消防署等へ届出書を提出することが必要です(政令第358号第1条の10)。

(2)取り扱いについて

石灰は降雨時または発汗状態での作業では、素肌に直接触れると皮膚の弱い人は軽度の炎症を起こす場合がありますので、保護手袋や長袖の服などを着用するなどの防護措置が必要です。
また、防護マスクや防護メガネを使用して取り扱って下さい。
万一、皮膚に触れた場合は、予め用意したポリタンク水等で十分に洗い流して、石灰を落として下さい。
これらの注意事項を遵守すれば肌荒れや炎症は防止できるので、工事監督者等は作業者に予防方法を徹底させることが重要です。

(3)応急措置について

・目に入った場合: 直ちにきれいな大量の水で、徹底的に洗浄して、速やかに医師の診断を受けて下さい。
・吸入した場合 : 直ちに空気の新鮮な場所に移動させるとともに、きれいな水でうがいをして、鼻腔を水洗いした後、速やかに医師の診断を受けて下さい。
・飲み込んだ場合: 直ちにきれいな水で口の中をよく水洗いして、速やかに医師の診断を受けて下さい。
・皮膚についた場合: 直ちに多量の水で洗い流して下さい。炎症が見られたら、速やかに医師の診断を受けて下さい。