《石灰製造工業会》
目標
(1)

2008 年度〜2012 年度の5年間平均の石灰製造に関わるエネルギー使用量を1990 年度に対し8%削減する

(2) 2008 年度〜2012 年度の5年間平均の石灰製造に関わるエネルギー起源のCO2 排出量を1990 年度に対し8%削減する
1.目標達成度

 エネルギー使用量の実績は,原油換算で1990年度121.8 万kl,2007年度112.0 万kl,2008年度96.5 万kl,であり,1990年度比20.8%,前年度との比較では13.8%の削減となった。
 CO2 排出量の実績は,1990年度354.0 万t,2007年度326.5 万t,2008年度271.5 万t であり,1990年度比23.3%の削減,前年度との比較では16.8%の削減となった。
 2008年度はエネルギー使用量,CO2排出量共に大幅に減少し,目標値に対しても大幅に下回る結果となった。これまでに実施してきた対策の効果は確実に得られていることもあるが,特に2008年度下期以降の世界的な景気急変により生産量が大幅に減少した影響も大きい。生産量は1990年度比3.5%,調査期間中最高であった前年度との比較では10.4%の減少であった。
 今後の見通しについては直近の生産動向が回復基調にあり,更なる減少が継続する可能性は低いと考えられる。2002年度から前年度まで6年連続で生産量が増加した(この間に25.7%の生産量増)実績もあり,生産量を推定する合理的な根拠に乏しい状況にある。
 しかし,これまでに実施してきた改善の成果と,今後計画されている温暖化対策により,目標を達成できると見込んでいる。


● 目標採用の理由
(1) 目標指標の選択
 環境自主行動計画に参画以来,エネルギー使用量を目標指標としていたが,社会的にもCO2排出量への関心,要求が高まっており,2007年(2006年度実績)よりCO2 排出量についても目標として採用することとした。製品毎に製造方法,製造能力,エネルギー使用量等が異なり,単純に原単位での比較は困難であるため,エネルギー使用量,及びエネルギー起源のCO2 排出量を指標としている。
(2) 目標値の設定
 当初は,京都議定書に定められた削減率[温室効果ガス排出量6%減]を考慮し目標設定していた。しかし,地球温暖化の抑制は世界的課題であり,石灰製造工業会としても,更なる改善を実施し社会に貢献すべきと考え,2007年(2006年度実績)より削減目標値を6%→8%に上方修正した。
2.目標達成への取組み
● 目標達成のためのこれまでの取組み
  ・リサイクル燃料の使用拡大
・運転方法の改善
・排出エネルギーの回収
・プロセスの合理化
・設備・機械効率の改善

● 2008年度に実施した温暖化対策の事例、推定投資額、効果
 2008年度に実施した対策事例として45件の報告があった。その投資額は約4億8千万円で,推計できる範囲でのエネルギー使用量削減効果は原油換算で約10,600kl(2008年度エネルギー使用量の1.1%相当),CO2排出量削減効果は約2万8千t(2008年度CO2排出量の1.0%相当)である。対策内容は以下のとおりである。


なお調査を開始した2002年度以降実施した対策とその効果は以下のとおりである。


 景気の影響はあるが毎年平均10億円程度の投資を実施しており,累計でのエネルギー使用量削減効果は原油換算で約11万kl,CO2排出量削減効果は約30万t である。

● 今後実施予定の対策
 2009年度以降に実施検討している対策として64件の報告があり,推定できる範囲内での投資金額は約10億5千万円で,削減効果は原油換算で約10,700kl(2008年度エネルギー使用量の1.1%相当),約2万8千t(2008年度CO2排出量の1.0%相当)である。対策内容は以下のとおりである。


 今後も継続的にこれまでと同等の改善が計画されている。これまでは,再生油,RPF 等のリサイクル燃料使用拡大が当業種の対策の中心であったが,更なる調達増が困難になってきていることから,効率改善やエネルギー回収を狙った対策にシフトしつつある。

● クレジットの活用状況と具体的な取組み状況
 該当なし。

3.クレジット調整(勘案)後CO2排出量
 該当なし。
4.実排出係数に基づく実CO2排出量


 CO2排出量の実績は,1990年度354.0万t,2007年度326.5万t,2008年度275.1万t であり,1990年度比22.3%の削減,前年度との比較では15.7%の削減となった。
2010年度の見通しついては,前述のとおり生産動向の予測が困難ではあるが,これまでに実施してきた改善の成果と,今後計画されている温暖化対策により,目標を達成できると見込んでいる。

5.CO2排出量減の理由
● 1990〜2008年度のCO2排出量増減の要因分析
  以下の手順によりCO2排出量の減少の要因を分析した。
生産量の影響
 1990年度CO2排出量×(2008年度生産量/1990年度生産量)−1990年度CO2排出量
電力の炭素排出係数の影響
 2008年度電力によるCO2排出量×(2008年度排出係数/1990年度排出係数)−
 2008年度の電力によるCO2排出量
電力使用の増加分
 1990年度電力によるCO2排出量×(2008年度電力使用量/1990年度電力使用量)−
 1990年度電力によるCO2排出量
総変化量から上記3項目を差しい引いた分を業種の努力分とした。



● 2008年度の排出量増減の理由
  エネルギー起源
 2007年度のCO2排出量は、1990年度と比較して78.9 万t 減少した。前述のとおり下期以降の景気の急変による生産量の減少で12.4万t 減少した。電力については,インバーター化やファンの効率化,等による改善を実施してきたが,製品構成の変化(加工品や高付加価値品の増加等),燃料改善のための設備の追加,などの影響もあり,結果的に微増となっている。一方でリサイクル燃料の使用拡大,熱効率の改善,等では68.7万t (前年度比10.9万t 削減)となった。これは,これまで継続的に実施してきた業界の努力が大きな成果として表れている他,生産量の減少により総量に限りのあるリサイクル燃料の使用割合が高くなったことも大きな要因である。
なお前年度との比較では生産量は10.4%減少し,CO2排出量も15.7%減少した。

工業プロセス起源
 石灰製造時に発生する工業プロセス起源のCO2は,石灰石,またはドロマイトを焼成する工程において,これらの主成分である炭酸カルシウム,炭酸マグネシウムの分解によるものである。従って,工業プロセス起源のCO2は技術的に改善する余地はなく,生産数量により決定される。


6.参考データ


 前述のとおり, これまで継続的に実施してきた業界の努力と,生産量の減少にも起因するリサイクル燃料の使用割合の増加等の要因により,エネルギー使用原単位は18%,CO2排出原単位は19%改善されている。しかし,今後の生産量の予測が困難な状況にあり,目標を確実に達成するためには,引き続き改善対策を実施する必要がある。


7.民生・運輸部門からのCO2 排出削減への取り組み

● オフィスからの排出


● 物流からの排出


● LCA 的観点からの評価

 都市ごみ焼却場などで使用される高反応性消石灰は,従来品と比較して使用量を大幅に低減できるため,製品や飛灰の輸送量の低減が可能となった。また,焼却場のみならず石灰は幅広い分野で環境目的に使用されており,地球環境の維持改善に大きく役立っている。
 一方,使用する副原料についても,高炉スラグや回収石膏等の副産品の使用拡大に努めている。


● 製品・サービス等を通じた貢献


● 国民運動に繋がる取組み
  ・2006年度に石灰の用途に関するパンフレットを作成。2007年度から毎年「石灰産業・環境への取組み」というタイトルのパンフレットを作成し,自治体や学校等へ配布を行い,石灰に対する更なる理解を得ている。2009年度版も作成予定。
・「クールアース・デー」に向けた取組としての「七夕ライトダウン」や「1人一日1kg CO2削減運動」,「クールビズ」の協力を全会員各社に対して働きかけを行った。
・「夏期の省エネルギー対策」として省エネルギー・省資源対策推進会議省庁連絡会議の決定事項について全会員各社に協力要請を行った。

8.エネルギー効率の国際比較
 日本の石灰製造に係るエネルギー効率やCO2発生量を諸外国と比較するため,及び温暖化防止に関わる新技術を探るために,国際石灰協会(ILA)を中心に欧州石灰協会(EuLA),米国石灰協会(NLA),カナダ石灰協会(CLI)などとの情報交換や文献調査を継続中である。
 EU 石灰業のエネルギー起源CO2発生原単位については,欧州石灰協会から,水平型炉では0.57トン,竪型炉では0.28トンと報告されている(国際石灰協会資料)。
米国石灰協会では,2003年より他の産業団体と共に”ClimateVISION”という名称の自主的なCO2削減活動を実施しており,2012年までにエネルギー起源CO2発生原単位を2002年比8%削減する,という目標を掲げている。米国は石灰焼成炉の90%以上が,竪型炉よりエネルギー効率の低いロータリーキルンで占められており,その結果からか,エネルギー起源CO2 発生原単位は0.64と高い値になっている(*1)。
 焼成炉の型式や使用燃料によってCO2発生原単位は大きくかわるので,バウンダリーを合わせるとともに,それらも類似させたデータの採取が今後とも必要である。
昨年9月ウイーンにて開催されたILA 運営委員会において,各国から地球温暖化に関する規制や取り組みについて説明がなされたが,米国をはじめとして,オーストラリア,カナダなども近〃政権交代や首脳交代が予想されているため,種々話はあったものの新政権が明らかになるまでは様子見といった結論であった。日本からは,環境自主行動計画の進捗状況や東京都の排出量取引などについて説明した。
 なお,本年10 月にバンクーバーにて開催予定だった同運営委員会は,世界的な経済危機のあおりを受け中止となった。
*1:National Lime Association---2008 Status Report
(http://climatevision.gov/sectors/lime/pdfs/2008_LimeStatusReport.pdf)
9.CO2 以外の温室効果ガス対策
 フロンガスの石灰焼成炉での分解処理を実施している。
10.森林吸収源の育成・保全に関する取組み
 今回の調査では報告なし。
11.環境マネジメント,海外事業活動における環境保全活動等
 2009年度現在,ISO14001を事業所取得しているのは7社12事業所,全社取得しているのは3社である。
注1. 本業種の主たる製品は,生石灰,消石灰,軽焼ドロマイト,水酸化ドロマイトである。今回のフォローアップに参加した企業数は,98 社中94 社で,カバー率96%である。
2. 参加企業のエネルギー種毎の使用量を合計し,使用量当たりの発熱量,CO2排出量などの係数を乗じて工業会データとした。また,購入電力の換算係数は,発電端の係数を使用している。
3. 当業界の生産活動量を表す指標は,主たる製品である生石灰,消石灰,軽焼ドロマイト,水酸化ドロマイトの生産量を採用し,原単位計算の分母とした。(生産活動指数の変化:1990年度1,05 年度1.00,06年度1.03,07年度1.08,08年度0.96, 目標年度見込み1.08)
4.

目標年の石灰生産量、エネルギー使用原単位及びCO2排出原単位については、2008年度実績値、2009年度〜2012年度は昨年度の推定値(経済成長率粗鋼生産量の推移及び石灰生産能力などを考慮した生石灰生産量、2007年度実績原単位)の5年間の平均値を採用した。

5. 生石灰及び軽焼ドロマイトを1t 生産するときに発生する非エネルギー起源のCO2は,それぞれ0.748t,0.815tとしている。