《石灰製造工業会》
今回から製鉄向けの石灰製品の生産を主な業としているJFEミネラル、セラテクノ、宇部日新及び戸高鉱業社の4社が加わり石灰製造工業会としての報告となりました。
目標:2010年度の石灰製造に関わるエネルギー使用量を
1990年度に対し6%削減する
1.目標達成度

 エネルギー使用量の実績は、原油換算で1990年度121.8万kl、2004年度101.3万kl、2005年度106.9万klであり、1990年度比12.2%の削減となった。また前年度との比較では5.5%の増加となったが、これは生産量が2.3%増加したこと、及び原単位指数が0.03増加したことによる。

これまでに実施してきた省エネ対策の成果により現時点では目標を達成しているが、2002年度以降4年連続で生産量が増加しており、今後更に生産量が増えた場合、2010年度までにエネルギー効率改善対策による原油換算2.3万kl相当(2.0%相当)の削減が必要となる。後述する今後実施予定の対策では2.2%の削減が期待されるため、目標は達成できる見込みである。
● 目標採用の理由
京都議定書に定められた削減率[温室効果ガス排出量6%減]を考慮し目標設定した。製品毎に製造方法、製造能力、エネルギー使用量等が異なり、エネルギー原単位での比較は困難であるため、総エネルギー使用量を指標としている。
2.CO2排出量
(1)エネルギー起源
 CO2排出量の実績値は、1990年度354.2万t、2004年度299.9万t、2005年度313.2万tであり,1990年度比で11.6%の減少となった。また、前年度との比較では4.4%の増加となった。CO2排出量の増減は、エネルギー使用量にほぼ一致している。2010年度では後述する今後実施予定の対策を含めると1990年度比6.2%が削減できる見込みである。
(2)工業プロセス起源
 原料である石灰石、ドロマイトを起源とするCO2排出量は、1990年度694.1万t、2004年度679.2万t、2005年度702.6万tである。この工業プロセス起源のCO2排出量は、石灰石とドロマイトで若干の違いはあるが、生産量によって決定されるものである。
3.目標達成への取組み
● 目標達成のためのこれまでの取組み

・リサイクル燃料の使用拡大
・運転方法の改善
・排出エネルギーの回収
・プロセスの合理化
・設備・機械効率の改善

● 2005年度に実施した温暖化対策の事例、推定投資額、効果
 2005年度に実施した対策事例は48件の報告があり、その投資額は約9億5千万円で、エネルギー使用量削減の期待効果は原油換算で約9,510klである。主なものは以下のとおりである。

● 今後実施予定の対策
 今後実施予定の対策として47件の報告があり、推定できる範囲内での効果は原油換算で約2.4万klである。これは、2005年度のエネルギー使用量の約2.2%に相当する。主な計画は以下のとおりである。

● 京都メカニズム活用の考え方と海外における具体的な取り組み状況
 <目標達成のための京都メカニズムの活用方針と参加企業の状況>

<具体的な取り組み>
4.CO2排出量増減の理由
● 1990〜2005年度のCO2排出量増減の要因分析
 エネルギー起源

 工業プロセス起源

● 2005年度の排出量増減の理由
 エネルギー起源
 2005年度のCO2排出量は、1990年度と比較して41.0万t減少したが、内41.1万t(削減量の100.2%相当)は、リサイクル燃料の使用拡大、プロセスの合理化、設備・機械効率の改善等、業界の省エネに対する努力の成果である。
 なお前年度との比較では、2005年度も前述のとおり相当量の省エネ対策を実施してきたが、生産量が2.3%増加(特にエネルギー使用量の大きな焼出量では3.4%増加)したこともあり、結果的にCO2排出量は4.4%の増加となった。生産量の増加に対して代替燃料の使用数量の増加が少なかったことも影響したと考えられる。
 工業プロセス起源
 石灰製造時に発生する工業プロセス起源のCO2は、石灰石、またはドロマイトを焼成する工程において、これらの主成分である炭酸カルシウム、炭酸マグネシウムの分解によるものである。従って、工業プロセス起源のCO2は技術的に改善する余地はなく、生産数量により決定される。
5.参考データ
 2005年度の生産量は1990年度比99.9%であり、ほぼ1990年度レベルである。これに対し、エネルギー使用原単位、CO2排出原単位は、これまでに実施してきた対策の成果によりそれぞれ12%、11%改善されている。2004年度と比較すると原単位指数は増加しているが、これは前述したとおり生産量の増加と比較して、代替燃料の増加量が少なかったためと推察される。
6.民生・運輸部門からのCO2排出削減への取り組み
● オフィス・自家物流からの排出
1) オフィスにおける取り組み
空調設定温度適正化、休み時間の消灯等による節電(10件)。
ペーパーレス化、グリーン商品化、使用済みコピー紙再利用等事務用品での取り組み(6件)。
社員への環境教育(2件)。
2) 物流における取り組み
大型トラックの導入による軽油使用量削減(3件、軽油14kl/年削減)。
3) 対象製品以外での取り組み
重機の大型化により軽油4kl/年を削減。
炭酸カルシウム工場自動制御による工場内照明の削減(13MWh/年削減)。
● 国民運動に繋がる取組み

環境省“チーム・マイナス6%”への参加。
2005年度に石灰の用途に関するパンフレットを作成、自治体・学校等へ配布し、石灰に関する更なる理解を得ている。

● 製品・サービス等を通じた貢献
客先の環境問題に関する協力を実施している。
● LCA的観点からの評価

 都市ごみ焼却場などで使用される高反応性消石灰は、従来品と比較して使用量を大幅に低減できるため、製品や飛灰の輸送量の低減が可能となった。また、焼却場のみならず石灰は、幅広い分野で環境目的に使用されており、地球環境の維持改善に大きく役立っている。
 一方、使用する副原料についても、高炉スラグや回収石膏等の副産品の使用拡大に努めている。

7.エネルギー効率の国際比較
 現在調査中であるが、石灰製造に必要なエネルギーは、焼成原石の性状、求められる製品特性により左右され、これらは地域毎に異なる場合があるため、単純に国際比較することは困難である。今後、比較の方法について検討する必要がある。
8.CO2以外の温室効果ガス対策
フロンガスの石灰焼成炉での分解処理を実施している。
9.環境マネジメント、海外事業活動における環境保全活動等
 参加企業中2005年度にISO14001を取得した事業所は3事業所である。(合計で7社11事業所であり、2004年度は6社8事業所であった。)
注1. 本業種の主たる製品は、生石灰、消石灰、軽焼ドロマイト、水酸化ドロマイトである。今回のフォローアップに参加した企業数は99社中96社で、カバー率97%である。
2. 2006年度よりさらに、製鉄向けの石灰製品の生産を主な業としている会社4社が石灰製造工業会(前・日本石灰協会)に参加し、4社を含めたデータの取りまとめを行っている。
3. 参加企業のエネルギー種毎の使用量を合計し、使用量当たりの発熱量、CO2排出量などの係数を乗じて工業会データとした。また購入電力の換算係数は、受電端の係数を使用している。
4. 製鉄所内で石灰製品を構内生産している事業所については、日本鉄鋼連盟との協議により、日本石灰協会加盟企業の事業所分は石灰製造工業会分に含むこととした。
5. 当業界の生産活動量を表す指標は、主たる製品である生石灰、消石灰、軽焼ドロマイト、水酸化ドロマイトの生産量を採用し、原単位計算の分母とした。(生産活動指数の変化:1990年度1、00年度0.91、01年度0.86、02年度0.90、03年度0.94、04年度0.98、05年度1.00、2010年度見込み1.09)
6. 2010年度の見通しは、2005年度の実績に日本経団連フォローアップの統一経済指標で示された経済成長率指数(06年度〜10年度)を乗じて算出した。
7. 生石灰及び軽焼ドロマイトを1t生産するときに発生する非エネルギー起源のCO2は、それぞれ0.748t、0.815tとしている。