《日本石灰協会》
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目標:2010年度の石灰製造に関わるエネルギー使用量を
1990年度に対し6%削減する
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1.目標達成度 |
エネルギー使用量の実績は原油換算で1990年度98.6万kl,2003年度76.5万kl,2004年度77.2万klであり,1990年度比21.7%の削減となった。また前年度との比較では0.9%の増加となったが,これは生産量が増加したことによる。
これまでに実施してきた省エネ対策の成果と,後述する対策を進めることにより,2010年度は確実に目標達成できる見込みである。
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● 目標採用の理由
京都議定書に定められた削減率[温室効果ガス排出量6%減]を考慮し目標設定した。製品毎に製造方法,製造能力,エネルギー使用量,等が異なり,エネルギー原単位での比較は困難であるため,総エネルギー使用量を指標としている。
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2.CO2排出量 |
(1)エネルギー起源 |
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CO2排出量の実績値は1990年度296.7万t,2003年度232.2万t,2004年度233.8万tであり,1990年度比で21.2%の減少となった。また前年度との比較では0.7%の増加となった。CO2排出量の増減は,エネルギー使用量にほぼ一致しており,2010年度では後述のエネルギー効率改善対策を含めると1990年度比15.4%が削減できる見込みである。
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(2)工業プロセス起源 |
原料である石灰石、ドロマイトを起源とするCO2排出量は1990年度527.0万t、2003年度489.2万t、2004年度517.5万tである。この工業プロセス起源のCO2排出量は石灰石とドロマイトで若干の違いはあるが、生産量によって決定されるものである。
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3.目標達成への取組み |
● 目標達成のためのこれまでの取組み |
・リサイクル燃料の使用拡大
・運転方法の改善
・排出エネルギーの回収
・プロセスの合理化
・設備・機械効率の改善
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● 2004年度に実施した温暖化対策の事例、推定投資額、効果 |
2004年度に実施した対策事例は46件の報告があり,その投資額は約10億円でエネルギー使用量削減の期待効果は原油換算で約3万9千klである。主なものは以下のとおりである。 |
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対策実績
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投資金額(千円)
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効果(原油換算kl)
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リサイクル燃料の使用拡大(9件) |
302,000 |
32,810 |
ロータリーキルンのショート化 |
300,000 |
3,500 |
焼成炉予熱帯の廃熱回収 |
4,500 |
21 |
粉体輸送方法の改善 |
29,000 |
31 |
消石灰の製品歩留まり改善 |
11,000 |
15 |
エンジンコンプレッサー導入 |
17,000 |
50 |
設備のインバーター制御化(6件) |
15,040 |
221 |
排ガスファンの高効率化(2件) |
18,500 |
217 |
焼成炉内耐火物の改善(4件) |
158,670 |
659 |
コンプレッサーの分散配置 |
10,000 |
37 |
焼成炉製品冷却設備改善 |
14,000 |
193 |
熱交換器改善(2件) |
34,000 |
523 |
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● 今後実施予定の対策 |
今後実施予定の対策として47件の報告があり,推定できる範囲内での効果は原油換算で約1万6千klである。これは2004年度のエネルギー使用量の約2.1%に相当する。主な計画は以下のとおりである。 |
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対策計画
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投資金額(千円)
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効果(原油換算kl)
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リサイクル燃料の使用拡大(6件) |
52,000 |
11,895 |
燃焼空気制御の最適化(2件) |
50,000 |
420 |
廃熱利用(2件) |
300 |
3 |
焼成ダストの有効利用 |
3,000 |
20 |
廃フレコンの油化技術開発 |
20,000 |
60 |
設備のインバーター制御化(7件) |
35,600 |
344 |
変電設備の高効率化(3件) |
78,000 |
44 |
焼成炉内耐火物の改善(2件) |
117,000 |
80 |
コージェネ導入 |
70,000 |
350 |
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4.CO2排出量増減の理由 |
● 1990〜2004年度のCO2排出量増減の要因分析 |
エネルギー起源 |
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項 目
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万tCO2
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1990年度比
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CO2排出量(1990年度) |
296.7
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−
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CO2排出量(2004年度) |
233.8
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78.8%
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CO2排出量の増減 |
-62.9
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-21.3%
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(増減の内訳) |
@生産量の変化 |
-6.5
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-2.2%
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A業種の努力分(燃料関係) |
-54.7
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-18.4%
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B業種の努力分(電力関係) |
-1.8
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-0.6%
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C電力の炭素排出係数の変化 |
0.1
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+0.0%
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合計(@+A+B+C) |
-62.9
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−
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項 目
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万tCO2
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1990年度比
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CO2排出量 |
1990年度 |
527.0
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−
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2003年度 |
489.2 |
92.8% |
2004年度 |
517.5 |
98.2% |
(生石灰+軽焼ドロマイト)焼出量 |
1990年度 |
700.0
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−
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2003年度 |
650.5 |
92.9% |
2004年度 |
688.1 |
98.3% |
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● 2004年度の排出量増減の理由 |
エネルギー起源 |
2004年度のCO2排出量は1990年度と比較して62.9万t減少したが,内54.7万t(削減量の87.0%相当)は,リサイクル燃料の使用拡大,プロセスの合理化,設備・機械効率の改善,等,業界の省エネに対する努力の成果である。
なお前年度との比較では,2004年度も前述のとおり相当量の省エネ対策を実施してきたが生産量が4.5%増加したことにより,結果的にCO2排出量は0.7%の増加となった。
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工業プロセス起源 |
石灰製造時に発生する工業プロセス起源のCO2は,石灰石,またはドロマイトを焼成する工程において,これらの主成分である炭酸カルシウム,炭酸マグネシウムの分解によるものである。従って,工業プロセス起源のCO2は技術的に改善する余地はなく,生産数量により決定される。
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5.参考データ |
エネルギー使用原単位,及びCO2排出原単位は1990年度を1としたとき2003年度→2004年度はそれぞれ、0.83→0.80,0.84→0.81であった。品種毎にエネルギー原単位が異なるため単純には比較できないが,前述した業界努力の成果により,共に前年度と比較して改善されている。
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6.民生・運輸部門からのCO2排出削減への取り組み |
● オフィス・自家物流からの排出 |
1) |
オフィスにおける取り組み
空調設定温度適正化,休み時間の消灯,等による節電(10件)。
ペーパーレス化,グリーン商品化,使用済みコピー紙再利用,等事務用品での取り組み(7件)。
社員への環境教育。
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2) |
物流における取り組み
大型トラックの導入による軽油使用量削減(2件,軽油15kl/年削減)。 |
3) |
対象製品以外での取り組み
肥料用炭酸カルシウム製造工程において自然乾燥を導入し乾燥設備の燃料を削減。
重機の大型化により軽油5kl/年を削減。
炭酸カルシウム工場内に高効率照明を採用(4MWh/年削減)。
井戸ポンプ運転方法の改善(133MWh/年削減)。
軽質タンカル製造工程の攪拌機運転方法の改善(144MWh/年削減)。
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● 国民運動に繋がる取組み |
環境省“チーム・マイナス6%”への参加。
各自治体主導の環境活動への参加。
緑化事業の実施。
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● 製品・サービス等を通じた貢献 |
客先の環境問題に関する協力を実施している。
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● LCA的観点からの評価 |
都市ごみ焼却場などで使用される高反応性消石灰は従来品と比較して使用量を大幅に低減できるため,製品や飛灰の輸送量の低減が可能となった。また,焼却場のみならず石灰は幅広い分野で環境目的に使用されており,地球環境の維持改善に大きく役立っている。
一方,使用する副原料についても,高炉スラグや回収石膏等の副産品の使用拡大に努めている。
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7.エネルギー効率の国際比較 |
現在調査中であるが,石灰製造に必要なエネルギーは,焼成原石の性状,求められる製品特性により左右され,これらは地域毎に異なる場合があるため,単純に国際比較することは困難である。今後,比較の方法について検討する必要がある。
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8.その他温暖化対策への取り組み |
● CO2以外の温室効果ガス対策 |
該当なし。エアコン等に使用されるフロン処理等については,適切な方法で実施している。 |
● 京都メカニズムの活用を含めた国際貢献プロジェクトの実施状況 |
該当なし。 |
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8.その他温暖化対策への取り組み |
参加企業中2004年度でISO 14001を取得したのは2社(合計で6社)。
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注1. |
本業種の主たる製品は、生石灰、消石灰、軽焼ドロマイト、水酸化ドロマイトである。今回のフォローアップに参加した企業(主に市販用石灰を供給している石灰専業会社)数は95社中92社で、カバー率97%である。 |
2. |
参加企業のエネルギー種毎の使用量を合計し、使用量当たりの発熱量、CO2排出量などの係数を乗じて協会データとした。また購入電力の換算係数は受電端の係数を使用している。 |
3. |
製鉄所内で石灰製品を構内生産している事業所については、日本鉄鋼連盟との協議により、日本石灰協会加盟企業の事業所分は日本石灰協会分に含むこととした。 |
4. |
当業界の生産活動量を表す指標は、主たる製品である生石灰、消石灰、軽焼ドロマイト、水酸化ドロマイトの生産量を採用し、原単位計算の分母とした。(生産活動指数の変化:1990年度1、99年度0.88、00年度0.89、01年度0.83、02年度0.89、03年度0.94、04年度0.98、2010年度見込み1.07) |
5. |
2010年度の見通しは、2004年度の実績に日本経団連フォローアップの統一経済指標で示された経済成長率指数(05年度〜10年度)を乗じて算出した。 |
6. |
生石灰及び軽焼ドロマイトを1t生産するときに発生する非エネルギー起源のCO2は、それぞれ0.748t、0.815tとしている。 |
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